能楽について

能楽

 能楽は、日本の伝統芸能であり、能と狂言から構成されます。600年以上の歴史を持ち、世界最古の芸能ともいわれています。また、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。


 能は、謡(うたい)と囃子(はやし)に合わせて、能面と呼ばれる仮面をつけた演者が舞を舞う演劇です。神や鬼、幽霊など、様々な登場人物が登場し、人間の内面や自然を象徴的に表現します。

特徴
能面:神・鬼・亡霊・女性・老人を演じる際に役者がつけて役を演じ、登場人物の性格や感情を表します。

:物語やセリフを歌い上げるもので、能の核となる部分です。

囃子:笛、小鼓、大鼓、太鼓などの楽器による演奏で、謡や舞いにあわせ物語の情景を演出します。

:能面をつけた演者が、笛の音にあわせた所作で物語を表現します。

演目
 能の演目は、現在では約250番程度あります。式三番に加え一番目物から五番目物までの分類に分かれます。能楽はかつて、式三番の後、一番から五番目物を演能することが公式な番組立てとされていました。しかし能楽の演目を6つも鑑賞するには、番組立てにもよりますが10時間程度掛かることから、現在では殆ど見られなくなっています。

能における主役は「シテ」と呼ばれます。シテは、人間のほかにも亡霊や精霊、鬼などの役柄を演じ、役柄に応じて衣裳を着けます。この世に存在しない役柄や女性、老人等を演じる際には能面を付けます。
能楽の登場人物は、シテ(主役)、ワキ(シテの相手役)、ツレ(シテ、ワキの助演者)で、シテは必ず一人です。ワキやツレは登場しない演目もあります。また、物語の前場(まえば)のシテを「前シテ」、後場(のちば)のシテを「後シテ」と呼びます。
演目の分類については、神男女狂鬼(しんなんにょきょうき)と覚えるとわかりやすいです。大体の演目は、一番から五番までそれぞれ後シテまたは物語の内容が、神・男(武者)・女(天女)・狂・鬼に関係しています。

式三番:翁(おきな)・三番叟(さんばそう)・千歳(せんざい)の3種で構成された能楽の中でも特別な演目。「式三番は能楽にして能楽にあらず」とも言われたりします。

一番目物:脇能や初番目物などとも呼ばれます。脇能の意味は、必ず式三番の次に来る演目という意味合いがあることからこう呼ばれます。後シテが神様の演目を一番目物に分類します。
※主な一番目物の演目・・・淡路、高砂、難波 etc

二番目物:後シテが武者の演目を二番目物に分類します。
※主な二番目物の演目・・・敦盛、箙、田村 etc

三番目物:後シテが天女の演目を三番目物に分類します。
※主な三番目物の演目・・・杜若、胡蝶、羽衣 etc

四番目物:後シテが人間の怨念や執念など心の変化に応じて狂ってしまう演目を四番目物に分類します。また仇討ちや離別・亡霊など一二三五番に分類しない能も分類されることから雑能物とも呼ばれます。
※主な四番目物の演目・・・葵上、道成寺、俊寛 etc

五番目物:後シテが鬼や天狗の演目を五番目物に分類します。能の演能番組の最後に置かれることから切能(きりのう)とも呼ばれます。
※主な三番目物の演目・・・石橋、猩々、土蜘蛛 etc

狂言
狂言は、能の合間に演じられる喜劇で、日常の出来事や人間模様をユーモラスに描きます。能とは対照的に、能面は使わず、素顔で演じられることが特徴です。

能楽の歴史  〜【能楽の源流】散楽から猿楽そして能楽へ
散楽 (さんがく)
奈良時代に中国から渡来した芸能で、アクロバットや曲芸、物まねなど、多様な要素を含んでいました。
猿楽 (さるがく)
 散楽が日本の土着の芸能と融合し、平安時代から室町時代にかけて発展しました。能と狂言の両方の要素を含み、次第に能楽の基礎となっていきました。

観阿弥・世阿弥の時代と能楽の完成
観阿弥:室町時代、大和猿楽の代表的な能役者。曲舞(くせまい)と呼ばれる新しい音楽様式を取り入れ、能の表現を豊かにしました。
世阿弥:観阿弥の子。能楽理論を体系化し、能を高度な芸術へと昇華させました。著書『花鏡』や『風姿花伝』は、現在も能楽の理論を学ぶ上で重要な文献となっています。
江戸時代:能楽の制度化と発展

式楽
 江戸幕府は、能楽を「式楽」と定め、武士の教養として奨励しました。

四座一流(しざいちりゅう)
 現在の能には観世、金剛、宝生、金春、喜多の五流派があり、プロの能楽師として活躍しています。その源流となった観世座、金剛座、宝生座、金春座の四つの座が確立された後、江戸初期に喜多流が樹立した。この五つの流派を合わせて四座一流と呼び、江戸幕府が保護した猿楽であり現在の五流派のもととなりました。

庶民への普及
能楽は武士だけでなく、町人にも広がり、庶民文化の一部となりました。

明治以降の能楽の変革と継承
明治維新後、能楽は伝統芸能として再評価され、近代的な舞台装置や照明などが導入されるなど、変革期を迎えます。 日本の伝統文化として国宝に指定され、その価値が広く認められました。また、能楽は海外でも公演されるようになり、世界的な芸術として注目を集めるようになりました。

能楽の現状と課題
伝統の継承: 能楽は、現代においても伝統芸能として大切に継承されており、後継者の育成が課題となっています。

まとめ
 能楽は、日本の歴史や文化を深く理解するために欠かせない要素の一つです。その長い歴史の中で、様々な変化を遂げながらも、日本の伝統文化として大切に受け継がれてきました。

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